何千年も昔、森で1ぴきの子どもが生まれました。オオカミの子です。ところが、このオオカミの子はほかの兄弟たちと少し違っていました。ケンカをするよりカタツムリのあとをつけ、ハタネズミを追いかけるより自分のしっぽを追いかけ。静かで穏やかに過ごすのが好き。そして切に思うのです。
「きょうだいの みんなみたいだったら よかったのに。
ほんものの オオカミみたいだったら よかったのに。」
そんなある日、オオカミの子は群れとはぐれてしまい、森の中で本当にひとりぼっちになってしまいます。みんなと違っていたからでしょうか。するとその時、オオカミの子は全く見たこともない生きものと出会い……。
どこか優しさの漂うオオカミの子の姿、美しく神秘的な場面の数々。この魅力的な絵で語られるのは、科学的な手がかりをもとに、想像豊かに描かれたイヌの起源の物語。はるか昔、オオカミの祖先の中からイヌへと進化したものが現れたのは、みんなと違ったからこそ生まれた奇跡なのかもしれない。その個性が私たち人間と出会えるきっかけとなったのかもしれない。フィクションですが、そんな風に想像するだけで、不思議と力をもらえるような気持ちになってきます。
「みんなとちがうって なんてすばらしいの」
翻訳されているのは、自然写真家の大竹英洋さん。巻末には犬の起源を知る手がかりについての解説も。現代に生きる私たちにも可能性を感じさせてくれる一冊です。
|